予定外のトラブルが、思いがけず良い朝を連れてきた

人生と仕事

何もできなかった夜のあとで

前日の仕事から帰宅したあと、何か作業を進めるつもりでいた。

自分の将来につながることもやりたかったし、好きなことを楽しむ時間も欲しかった。それなのに、家に着くと気力が残っておらず、そのまま眠ってしまった。

以前の私は、こういう夜があると「せっかくの時間を無駄にした」と考えやすかった。

けれど、その日は早く眠ったことで、翌朝までに7時間ほど睡眠を取ることができた。目が覚めると、前日までの疲労感はかなり軽くなっていた。

その日は、朝から引越しの仕事が入っていた。重い荷物を運び、階段や狭い通路を何度も往復する肉体労働だ。

これまでは、前日の夜まで別の仕事をしていることもあり、睡眠不足のまま出勤する日が少なくなかった。だから、7時間眠った状態で仕事へ向かえること自体が、私にとっては少し珍しいことだった。

前日の夜に何もできなかったのではない。

翌日の仕事を安全に乗り切るために、必要な回復へ時間が使われたのだと思うと、見え方が少し変わった。

出勤前に発覚した制服のトラブル

ところが、出勤準備をしている途中で問題が起きた。

仕事用の制服を洗濯したまま、乾燥機へ移すのを忘れていたのだ。濡れた状態で長時間放置してしまったため、生乾きの嫌な臭いが発生していた。

慌てて洗い直したものの、自宅の乾燥機では完全に乾くまで数時間かかる。出勤には間に合いそうになかった。

新しい制服を買うことも一瞬考えた。しかし、近所を調べてみると、歩いてすぐの場所にコインランドリーがあることが分かった。

高出力の乾燥機なら、洗濯物が少なければ短時間で乾かせる。洗濯が終わると、制服を抱えて急いでコインランドリーへ向かった。

制服を乾燥機に入れ、設定した時間は20分。

問題そのものは、これでほぼ解決した。

乾燥を待つ20分に見えたもの

乾燥機が回っている間、店内で待つか、一度家へ戻るか迷った。

その日は、海辺で地域の祭りが開かれる朝だった。早朝から多くの神輿が海岸へ集まり、海へ入っていくことで知られている。

私はもともと、その祭りを見に行く予定ではなかった。仕事もあるし、時間にも余裕がない。

ただ、コインランドリーから海までは近い。乾燥が終わるまでの短い時間なら、様子だけでも見られるかもしれないと思った。

海へ向かう道では、祭りに参加するらしい人たちが次々と歩いていた。会場へ着くと、まだ薄暗さの残る海岸に、たくさんの神輿と人が集まっていた。

これから神輿が海へ入っていくところのようだった。

長く滞在する時間はなかった。それでも、朝の海、神輿の列、人々の熱気を目にすることができた。

短い時間だったが、「海辺の町で暮らしている」という感覚を久しぶりに強く味わった気がする。

乾燥機の終了時刻が近づいたため、その場を離れてコインランドリーへ戻った。制服は無事に乾き、臭いも残っていなかった。

困っていた問題は解決し、その途中で思いがけず祭りまで楽しめた。

少しラッキーな朝だった。

トラブルを美化する必要はない

もちろん、制服を放置した失敗そのものが良い出来事だったわけではない。

出勤前に余計な作業が増え、時間にも追われた。状況によっては遅刻や買い直しにつながっていたかもしれない。

だから「トラブルには必ず意味がある」とまで言うつもりはない。

ただ、起きてしまった問題を解決する過程で、予定していなかった良いものに出会うことはある。

問題をなかったことにはできない。しかし、問題によって生まれた時間や移動の中から、小さな価値を拾うことはできる。

その日は、制服のトラブルがなければ、私は祭りを見に行かなかった。

嫌な出来事が、そのまま良い出来事に変わったのではない。困った状況を一つずつ処理していった先に、偶然、良い朝が待っていたのだと思う。

睡眠は余裕ではなく、安全装置だった

その日の引越し作業では、いつもより身体が軽く動いた。

暑い季節の肉体労働は、ただでさえ身体への負担が大きい。睡眠不足が重なれば、判断が遅れたり、足元が乱れたり、重い荷物を持ったときに姿勢を崩したりする危険も増える。

これまで私は、睡眠を「取れたら助かるもの」として考えていた部分があった。

しかし実際には、十分な睡眠は仕事を楽にするためのご褒美ではない。怪我をせず、周囲にも迷惑をかけず、無事に帰宅するための安全装置だった。

前日の夜に何かを進めることよりも、翌日の身体を守る方が価値の高い場合もある。

何もできなかったと思っていた夜が、翌日の軽快な動きにつながっていた。制服の失敗から始まった朝が、思いがけない祭りの風景につながった。

一日の価値は、最初に立てた予定どおりに進んだかどうかだけでは決まらない。

予定外のことが起きても、その都度、現実に合う方法を選び直していけばいい。そうして動いた先で、ときどき想像していなかった良い時間に出会える。

あの朝の海岸で見た神輿の風景は、そんなことを思わせてくれた。

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