最近、ちゃんと働いているはずなのに、いつもお金が足りないと感じていた。
複数の仕事を掛け持ちし、体が疲れるほど働いている。それでも口座の残高を見ると、余裕が増えているようには見えない。むしろ支払いのたびにお金が減り、「これだけ働いているのに、なぜ何も残らないのだろう」と悲しくなることがあった。
もちろん、理由がまったく分からなかったわけではない。
私はリボ払いの残高を早く減らしたくて、毎月かなりの金額を返済に回していた。将来の負担を軽くしたいという気持ちが強く、生活費に余裕がなくなるほど返してしまうこともあった。
けれど、その状態が続くと、返済を進めているはずなのに、暮らしは少しも楽にならない。
そこで、カードごとのリボ残高をExcelにまとめ、月ごとの推移を自分の目で確認してみることにした。
お金が「消えた」と感じていた
毎月働き、収入が入ってくる。
その一方で、家賃や公共料金、食費、通信費、カードの支払いが次々と引き落とされる。口座に入ったお金は、しばらくするとほとんど残っていない。
こうした状態が続くと、お金がどこかへ消えてしまったように感じる。
特に、返済は目に見える成果を感じにくい。
何か商品を買えば、手元に物が残る。旅行へ行けば、経験や思い出が残る。しかし借金の返済は、口座からお金が出ていくだけに見える。
そのため、働いて得たお金がすべて吸い込まれ、自分の生活には何も残っていないような感覚になっていた。
実際には残高が減っているのだが、数字を継続して記録していなければ、その変化を実感するのは難しい。
AIに任せた記録が、かえって不安を増やした
最初は、カードの明細や画面をAIに読み取らせ、残高の推移を記録してもらおうとしていた。
私は仕事でもAIを使っているため、単純な数字の整理であれば効率化できると思ったからだ。
しかし、画像から文字を読み取るOCRの精度が十分ではなかった。
数字が一桁違っていたり、別の金額として認識されていたりする。文章なら多少の読み間違いがあっても前後から推測できるが、会計の数字ではそうはいかない。
一万円の誤差でも、返済計画を考えるうえでは大きい。
便利にするために使った仕組みなのに、「この数字は本当に正しいのだろうか」と毎回確認しなければならない。結果として、かえって不安と手間が増えていた。
そこで、残高については自分でExcelへ入力することにした。
手作業は増える。しかし、金額を一つずつ確認しながら入力することで、少なくとも数字の出どころは自分で把握できる。
何でも自動化すればよいわけではない。間違いが大きな影響を与える部分は、効率より正確さを優先したほうがよいのだと思う。
Excelに並べて、初めて返済の成果が見えた
カードごとの残高を月別に並べ、最後に合計を出した。
すると、前年末には80万円を超えていた残高が、半年ほどで50万円台まで減っていることが分かった。
一部に未確認の数字があるため、厳密な比較とはいえない。それでも、全体としてかなり返済が進んでいることは見て取れた。
私はこれまで、「働いてもお金が残らない」とばかり考えていた。
しかし実際には、働いて得たお金の多くが、過去の負債を減らすために使われていた。
お金が消えたのではなく、目に見えにくい場所で、自分の将来の負担を小さくしていたのである。
数字を表にしたことで、ようやくその事実を実感できた。
もちろん、借金が減ったからといって、今の苦しさがなくなるわけではない。生活費が足りない不安も、毎月の支払いの重さも残っている。
それでも、「何も進んでいない」のと「苦しいながらも進んでいる」のとでは、気持ちがまったく違う。
返済を急ぎすぎると、生活が壊れる
残高が減っているのを確認できた一方で、別の問題も見えてきた。
私は返済を急ぐあまり、毎月の生活に必要なお金まで削っていた。
借金は早く減らしたほうがよい。その考え自体は間違っていないと思う。
ただ、返済のために食費や通勤費が足りなくなり、再びカードを使うことになれば意味がない。生活を維持できないほど返すと、結局は別の形で借金を増やすことになる。
大切なのは、最短で返すことだけではなく、返済を続けられる状態を作ることなのだろう。
家賃、固定費、食費、通勤費を確保する。少額でも急な出費に備える。そして残った金額を返済に回す。
今月は、これまでより返済額を減らす必要がありそうだ。
以前の私なら、それを後退のように感じていたと思う。
しかし今は、生活を守るための調整だと考えている。一度支払額を減らしても、これまで返してきた金額がなくなるわけではない。
無理をして倒れるより、続けられる形へ修正するほうが、最終的には完済へ近づくはずだ。
会計は、自分を責めるためのものではない
会計や家計簿というと、無駄遣いを見つけ、自分を反省させるためのものだと思いがちだ。
けれど今回、数字を整理して感じたのは、会計は自分を責めるためではなく、現実を正しく見るためのものだということだった。
「お金がない」という感覚だけで考えていると、不安はどこまでも大きくなる。
数字にしてみれば、返済が進んでいることも、今月は無理をしすぎていることも見えてくる。
良いことだけではなく、苦しいことも数字になる。
それでも、曖昧な恐怖を抱え続けるより、現状が分かるほうが次の行動を決めやすい。
私はこれからも、毎月の残高をExcelへ記録していこうと思う。
完璧な表を作る必要はない。未来を正確に予測できなくてもよい。
ただ、自分がどこにいて、どれくらい進んだのかを確認できればいい。
働いてもお金が残らないように見える時期にも、その裏側では少しずつ負担が減っていることがある。
数字は冷たく見える。
けれど、正しく記録された数字は、ときに「あなたは何もしていないわけではない」と静かに教えてくれる。