AIで553記事のWordPress移行に挑む|古いWebサイトの再生で見えた「任せる」と「判断する」の境界

AIとWeb制作

長年運営してきた専門サイトのリニューアルに向けて、過去の記事を新しいWordPress環境へ移す作業を進めている。

対象は553記事、メディアは6,559件。数字だけを見ても、手作業で一つずつ移すのは現実的ではない。かといって、すべてを自動処理して「移りました」で終わらせるわけにもいかない。記事本文だけでなく、画像、関連記事、商品リンク、投稿者、公開状態など、記事を記事として成立させている要素がいくつもあるからだ。

生成AIや開発支援ツールを使えば、大量のデータを調べ、変換し、移行用の処理を組み立てられる。けれど今回の作業で強く感じたのは、AIが処理できる範囲が広がるほど、人間が決めるべきことも、むしろはっきりしてくるということだった。

553記事をどう分けるかで、作業全体が止まっていた

当初は、553記事を二つに分ける予定だった。リニューアルするサイトに残す382記事と、将来別のサイトへ移す171記事である。

分類としては筋が通っている。しかし、二つのサイトへの移行を同時に考えると、公開までの経路が複雑になる。記事の振り分け、画像の扱い、内部リンクの変更、移行時期の違い。正しく整理しようとするほど、最初のサイトを再公開するという目的そのものが遠くなっていった。

そこで、まず全553記事を一つのサイトへ移す方針に変えた。171記事を別のサイトへ移す作業は、再公開後の独立した工程に分ける。

これは分類を諦めたわけではない。いま必要な判断と、あとで行えばよい判断を分離したのだ。最終形を一度に完成させようとせず、まず一つのサイトを再び動かす。この順序を決めたことで、作業は一気に前へ進み始めた。

大量移行の前に、10記事だけを試した

方針が決まったあとも、いきなり553記事すべてを取り込むことはしなかった。

専用の投稿者を作成し、固定した10記事と67件のメディアだけをステージング環境へ試験移行した。プログラム上は問題なく処理できても、実際の画面で見なければ分からないことがあるからだ。

目視確認では、アイキャッチ画像の二重表示、古い関連記事欄、内部URLがそのまま露出したリンク、商品紹介カードなど、複数の課題が見つかった。本文画像とアイキャッチが同じこともあったが、それは必ずしも削除すべき重複ではなかった。

自動処理だけで見れば、同じ画像は「重複」である。けれど、読者が記事を開いたときの見え方まで考えると、残したほうが自然な場合もある。データとして同じかどうかと、記事として必要かどうかは、別の判断なのだ。

AIに任せたのは、判断ではなく「判断できる状態」まで

関連記事については23件を確認し、19件を自動で復元・変換できた。残り4件は手動確認へ回した。32本のリンクも、31件の記事カードと1件の外部リンクに整理できた。

この結果だけを見ると、AIが移行を自動化したように見えるかもしれない。実際には、AIに任せたのは最終判断ではない。大量のデータを調査し、変換候補を作り、問題があるものだけを人間が確認できる状態まで絞り込む部分だった。

すべてを人が確認すれば時間がかかりすぎる。すべてをAIへ任せれば、壊れ方に気づけない。その間に、「安全に自動化できるもの」「目視が必要なもの」「判断を保留するもの」という境界を作る。

今回の移行では、書き込み、試験移行、目視承認、全件実行の間に停止地点を置いた。問題が見つかれば、553記事へ広がる前に止められる。

AIを使うことの価値は、単に処理速度を上げることだけではない。人間が責任を持って判断できる大きさまで、複雑な問題を整理してもらえることにもある。

古いサイトを移すことは、過去を捨てることではない

この日の作業終了時点では、全件インポートをまだ実行していなかった。試験記事の表示確認、商品紹介カードの再構築、手動確認が必要な項目、カード画像が未解決の項目が残っていたからだ。

作業量だけを考えれば、勢いのまま全件移行まで進めたくなる。実際、生成AIと一緒に複雑な問題を一つずつ形にしていく作業は面白く、気づけば深夜まで続けていた。

それでも、「進められる」と「進めてよい」は同じではない。未解決の項目が見えているなら、そこで止まることも移行作業の一部である。

過去の記事は、単なる553件のデータではない。一つひとつが、これまで作ってきた記録であり、これから新しいサイトを形づくる材料でもある。だからこそ、古いものを一括で運ぶのではなく、意味や見え方を確かめながら、新しい場所で読める形へ整え直したい。

AIによって、自分一人では現実的でなかった規模の作業に手が届くようになった。ただし、何を残し、どの順序で進め、どこで止まるかは自分で決める。

古いWebサイトの再生は、AIにサイトを作り直してもらう作業ではない。AIによって広がった制作能力を使いながら、自分の手で過去の資産を未来へつなぎ直す作業なのだと思う。

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