14時16分に、こう書いている。
禁煙セラピーを読んで、このタバコを最後にタバコをやめました。これで自由だー。
「だー」まで伸ばしている。決意を清書した文というより、その場で漏れた言葉に近い。
この時刻に、身体が軽くなったのか、明日の朝も吸わないのかは、まだ何も足していない。先に残ったのは、自由だ、という一声だった。
午前は、まだ吸う側だった

夜の睡眠は1時半から7時まで、五時間半だった。起きてすぐ、7時1分にタバコと残している。
そのあとも、7時16分、7時58分、8時11分、8時38分。午前のメモは、ほとんどが一服の時刻だった。
昼すぎの12時32分には、駅の喫煙所を検索している。まだ、吸ってよい場所を探す側にいた。
朝から吸っていた時間は、手順の途中だ。読み終えるまでは吸ってよい。読み終えた瞬間を、今回の終点にする。そう決めていた。終点の前に、吸える場所を探すことも、その手順の中にある。
手順が終わったのは、喫煙所を検索してから、およそ二時間後だった。
本数を時刻つきで残すようになった経緯は、以前の記事に書いてある。
終点の言葉は、14時16分に出ていた

7月に、同じ本のことを書いている。読み終えるまでは、我慢して本数を減らさない。読み終えた瞬間にやめる。過去にも、そのやり方で吸わない時期に入ったことがあった。また吸った時期もある。だから、読み終えることを、成功の証明にはしていなかった。
あの記事の時点では、まだ読み終えていなかった。終点を、先に置いただけだった。
9月に入ってからも、本数は記録していた。読み始めたのが7月の当日なのか、一度止まって読み直したのかは、9月28日のメモには残っていない。残っているのは、14時16分に「読んで、このタバコを最後にした」と書いたことだ。ページの最後まで来た、とまでその行は書いていない。7月の手順に当てはめれば、読み終えた瞬間の宣言に当たる。
7月の理由は、だるさだった。長く寝ても疲れが抜けない。仕事のあとに何もできない。海へ行きたい日に、身体が動かない。遠い病気の話より、今日の重さが、やめる理由になっていた。
9月28日に出てきた言葉は、自由だった。7月に書いていただるさは、この一行には出てこない。
だるさが消えたから自由だと言ったのか。吸う場所を探さなくてよくなる感じを、自由と呼んだのか。本を閉じた安堵なのか。14時16分の自分は、そこを分けていない。
「これで自由だー」は、確認の前に出ていた

「やめました」と「自由だー」が、同じ行にある。
やめた、は、いま起きたことの宣言に見える。自由だー、は、その確認が済む前に出た声に聞こえる。
二時間前まで、吸える場所を検索していた。検索していた時間を、間違いだったことにはしたくない。本が終わるまでは、あの検索は手順の内側だった。変わったのは、終点の条件が、検索のあとに満たされたことだ。
自由の中身を、この日は説明していない。説明を足したくなる。「吸う場所を探す手間がなくなったから自由、なのだろう」と。書いてみて、すぐ引っかかる。メモにあるのは「自由だー」だけで、手間の話は、あとから足した読みだ。
自由だと言ったあと、15時から寝ていた

14時16分の次に残っているのは、仮眠だ。15時から19時半まで。
仮眠、と自分では書いている。時計の上では四時間半ある。自由だと言ってから、起きてその言葉を確かめた記録は、このあいだにない。
午後の眠りが伸びた理由を、タバコと結びつけて書いた箇所もない。ニコチンが切れて眠くなったのか、ただ寝不足だったのか、本を閉じたあとに力が抜けたのか。9月28日のメモは、そこを決めていない。
19時59分に、モンスターと書いてある。エナジードリンクだ。起きてから手を伸ばした記録は、タバコではなく、それだった。
代わりにするつもりだったのか、ただ飲みたかったのかは、メモにない。吸いたくなったかどうかも、ない。
翌日の朝は、まだこの日の外にある

7月の記事では、タバコを手放せば、疲れの理由が一つ減って、身体の変化を見られる、と書いていた。
9月28日の夜の時点では、その観察は始まっていない。自由だと言ったあとに起きている時間が、ほとんど残っていなかった。
酒をやめたあとも、疲れた帰り道には、飲みたくなる回路が残っていた。やめると書いた夜に、回路まで消えたわけではなかった。その感覚は、春に書いている。
タバコの回路が、あの一行で消えたかどうかは、この日には確かめていない。慎重に構える言葉は、寝て起きてからも、まだ出てきていない。あの時刻にあったのは、自由だ、という声のほうだ。
次に見たいのは、朝、起きて最初に何を書いているか。吸える場所を探したくなる場面が来たとき、検索しているか。7月に気にしていただるさは、タバコと一緒に軽くなるのか、別の理由で残るのか。
それは、この日のメモの外にある。
同じ時期の、生活や仕事の記録は、人生と仕事の記事一覧にまとまっている。


