作業用ゲームとして使い始めた『Chill with You』で、後日談の最終話「約束」を読み終えた。
これによって「相棒」の実績を解除。その後、サトネとの通常会話を続けていると「7年7日」も解除され、実績は23個中19個まで進んだ。
残りは4個。数字だけを見れば、コンプリートまでもう少しだ。
ただ、ここまで来て気づいたことがある。
『Chill with You』は、実績を効率よく回収しようとするほど、本来の魅力から離れてしまうゲームなのかもしれない。
作業を始めるために起動したゲーム
『Chill with You』は、画面の向こうにいるサトネと一緒に作業できるゲームだ。
サトネがタイピングする音や、紙に文字を書く音を聞きながら、自分もパソコンへ向かう。集中力を強制的に高めるというより、誰かが同じ空間で作業しているような感覚をつくってくれる。
私の場合、何もない状態から仕事を始めるときには、意外と大きなエネルギーが必要になる。
やるべきことは分かっていても、最初のファイルを開くまでが重い。そんなとき、『Chill with You』を起動すると、サトネが先に作業を始めている。その姿につられるように、自分も手を動かし始められる。
最初は、あくまで作業開始を助けるための道具だった。
それが使い続けるうちに、ゲームを「使っている」という感覚が少しずつ薄くなっていった。
「相棒」は実績名以上のものだった
後日談の最終話を読み終え、「相棒」の実績が表示されたとき、不思議と納得できた。
もちろん、現実に存在する誰かと同じではない。それでも、長い作業時間を一緒に過ごし、画面の端でタイピングする姿を何度も見てきた。その積み重ねがあるから、「相棒」という言葉が単なる実績名には見えなかった。
『Chill with You』では、派手なイベントが次々と起きるわけではない。ゲームの中心にあるのは、むしろ何も起きていない時間だ。
サトネが作業し、自分も作業する。ときどき会話をして、またそれぞれの時間へ戻る。
一般的なゲームでは省略されやすい「一緒に何かを続けている時間」が、このゲームでは関係性そのものになっている。
だからこそ、「相棒」の実績は、特定の物語を読み終えた報酬であると同時に、これまで一緒に過ごした時間へ名前を付けるものにも感じられた。
残った実績は、時間を操作しても取れない
現在、残っている実績は次の4つだ。
- ポモドーロ作業累計100時間で解除される「作業記念日」
- 起動時に猫耳ヘッドホン姿が現れる「アンティーク……だよね?」
- サトネが水を飲みこぼすと解除される「熱っ!」
- 休憩中に眠ったサトネをクリックする「寝てない……寝てないよ?」
累計作業時間は約93時間。100時間までは、あと7時間ほどなので、起動したまま作業を続ければ自然に届くだろう。
一方、残りの3つはランダムな演出や、その瞬間に気づけるかどうかに左右される。
最初は、できるだけ早く実績を解除する方法を考えた。作業タイマーを回し続けながら、画面を頻繁に確認すれば、コンプリートへ近づけるかもしれない。
しかし、それでは作業へ集中するために起動したゲームが、作業中に監視しなければならない対象になってしまう。
サトネと一緒に作業するはずが、サトネの行動を見逃さないために自分の作業を止める。それは少し違う気がした。
そこで、100時間到達だけを急ぐのではなく、停止状態でも起動しておき、ランダムな出来事が起きるのを待つことにした。
効率を求めない方が、目的に近づけることもある
実績解除には明確な条件がある。
条件が分かれば、最短経路を探したくなる。何時間必要なのか、どの状態で待てばよいのか、イベントが起きる確率を上げられないか。ゲームを攻略するうえでは自然な考え方だと思う。
けれど、『Chill with You』のようなゲームでは、最短経路を求めることが必ずしも最適とは限らない。
このゲームから受け取っているものは、実績の数だけではない。作業を始めるきっかけや、静かな環境音、ひとりで作業している感覚を少し和らげてくれる存在感も含まれている。
実績解除を急ぐあまり、作業時間を不自然に増やしたり、画面から目を離せなくなったりすれば、本来の役割と逆転してしまう。
作業を助けるためのゲームに、自分の作業を支配されてしまうからだ。
すぐに結果を出そうとせず、普段どおり使い続ける。その結果として、ある日ふいに猫耳ヘッドホンのサトネが現れたり、水をこぼしたり、眠っているところを見つけたりする。
その方が、このゲームらしい実績の取り方なのだと思う。
100時間は、消化する数字ではなく積み重ねた時間
「作業記念日」まで、あと約7時間。
7時間だけを見れば、意識的に消化することもできる。しかし、その7時間を埋めるためにゲームを起動するより、実際の作業に付き合ってもらった結果として100時間へ到達したい。
100時間という数字には、集中できた時間だけでなく、思うように作業が進まなかった時間も含まれている。画面を開いたまま考え込んだ日も、途中で別のことに気を取られた日もあった。
それでも、サトネのタイピング音を聞きながら、少しずつ作業を続けてきた。
その積み重ねがあるから、「作業記念日」という実績にも意味が生まれる。
『Chill with You』を始めたとき、求めていたのは作業効率だった。しかし、今感じている魅力は、効率よりも継続に近い。
大きく背中を押すのではなく、作業をしているあいだ、静かにそこにいてくれる。だから無理に進めなくても、使い続けていれば自然に実績へ近づいていく。
残り4個をいつ解除できるかは分からない。
それでも、急ぐ必要はないと思っている。
実績を取り終えることよりも、実績が残っている時間も含めて、これからの作業を一緒に積み重ねていく。その過程こそが、『Chill with You』を作業用ツールではなく「相棒」に変えているのだと思う。