ある日、ChatGPTのアカウントが使えなくなった。
開発の相談相手が急にいなくなった、というだけの話ではあるのだが、思っていたより困った。前日に異議申し立てが却下され、もう戻らないと分かった直後の話だ。
私は日々の作業記録をObsidianにデイリーノートとして書きためている。これはもともと全部、自分の手で書いていた。AIに投げていたのは相談の方だけだ。それでも片方が抜けると、書く場所そのものが決まらなくなった。
代わりのAIはある。ただ、代わりを立てたら立てたで、別の問題が出てきた。
最初に詰まったのは「どっちで書くか」ではなかった
手元には2つある。スマホでも使えるClaudeと、PCのエディタに常駐しているCursorだ。
分担は自然に決まった。Claudeは外出先の入力に向いているし、Cursorはファイルを直接触れるので実装と記録の本体に向いている。ここまでは迷わなかった。
詰まったのはその次だ。両方でノートを書き始めると、同じノートが2つ育ってしまう。どちらが本物か分からなくなる。
「1日の最後にまとめて渡す」で足りると思っていた
最初に立てた方針はこれだった。外出先ではClaudeに書きためて、1日の終わりか翌朝にまとめてCursorへ渡す。
理由もあった。翌日にその日のブログ記事を書くので、どのみち1日分の記録を1箇所に統合してからでないと執筆に入れない。NIGHTREIGNの記事では、デイリーノートから体験を拾って1本にまとめる流れがすでに回っていた。
だったら統合のタイミングを1日1回にすればいい、と考えた。
ところが書いているうちに気づいた。外出先で考えたことが、帰宅してすぐCursor側で扱えない。スマホで「これはこうしよう」と決めたことを、家に帰ってエディタを開いた瞬間には使えないのだ。1日の終わりまで待つことになる。
これでは意味がない。最初の方針は、その日のうちに崩れた。
GitHubを入れようとして、止められた
次に思いついたのがGitHubだった。差分が残るし、履歴も追える。エンジニア的にはこれが正解に見える。
そうClaudeに提案してみたら、返ってきたのは「問題は同期技術ではなく運用の方だ」という指摘だった。
言われてみればそうだった。私のノートは1つのファイルに時系列で追記していく形式で、1日に何度も書き足す。この使い方でGitを入れると、貼り付けるたびにコミット操作が発生する。スマホからpushするには別アプリも要る。同じファイルを両方から触ればコンフリクトも起きる。それを解消する手間は、今使っているクラウド同期より明らかに重い。
つまり、都度貼り付けるようにすれば、今の環境のままで足りる。困っていたのは同期の速度ではなく、「まとめて渡す」と決めた自分の運用だった。
新しい道具を足す前に、運用を疑うべきだった。これは何度も繰り返している失敗な気がする。
自分の投稿だけコピペしても、引き継げない
もうひとつ分かったことがある。
ClaudeとCursorの間で会話を引き継ぐとき、会話ログを丸ごと渡すのは長すぎる。かといって自分の発言だけ抜き出すと、今度はAIが出した判断や理由がまるごと消える。それでは引き継いだ側が同じ質問をやり直すことになる。
ChatGPTが使えていた頃も、似たことがあった。Cursorが作ったデータを自分でChatGPTへ運び、結果をまたCursorへ戻す。人間が介在する意味のない運搬に、かなり疲れていた。
残すべきは、結論と、その根拠だった。
そこで引き継ぎ用のテンプレートを作った。今の自分の状態、決めたこと、まだ決めていないこと、AIが出した結論とその理由、食い違いや見落としの指摘、次にやること。この順で書き出す。会話にない情報は「会話にない」と明記して、推測で埋めないようにした。
運用を始めたばかりなので、これがうまくいくかどうかはまだ分からない。
Cursorが、私のノートに追記していく
もうひとつ、まだ答えが出ていないことがある。
デイリーノートをCursorで書くように変えてから、Cursorが自動で項目を追記するようになった。書き換えるわけではなく、足りない部分を補って体裁を整えてくれる。
出てきた文章は、それほど悪くない。むしろノートとしては充実する。だからそのままにしている。
ただ、自分の把握具合が明らかに減った。追記された分まで含めて読み返しても、「自分が何を考えていたか」の手触りが薄い。整った記録は残るのに、その日の温度が残らない。
大量処理はAIへ任せても、最後の判断までは人間側に残す、という考え方は以前から持っていた。
今のところの印象としては、Obsidianのデイリーノートは自分だけが書いた状態の方がいい気がしている。生の声が残るからだ。相談はAIとして、記録は自分で書く。ChatGPTを使っていた頃は自然とそうなっていたのに、Cursorに移した途端に境界が曖昧になった。
これをどう戻すかは、まだ決めていない。
まだ決まっていないこと
同期の方式は確定していない。都度貼り付けが本当に回るのか、しばらく試さないと分からない。Claudeを有料プランにするかどうかも保留のままだ。開発効率は上がりそうだが、費用に見合うかはまだ判断できていない(Cursorはすでに有料プランで契約している)。
ひとつだけ手応えがあるのは「正本は1つにする」という原則だ。書く場所は分けていい。でも、育てるファイルは1つに固定する。
ただ、正本を1つにしたとして、それを誰が書くのかという問題は別に残っている。ChatGPTが止まって困ったのは、相談相手を失ったことより、記録の置き場所と書き手が曖昧なまま運用していたことの方だったのかもしれない。片方が抜けて、はじめてそれが見えた。



