それまで吸っていたクール12mgから、クールマイルド8mgへ変えた。
数字だけを見れば、少し軽いものを選んだことになる。身体への負担も、出費も、以前より抑えやすくなるような気がしていた。ところが、実際に起きたのは逆だった。1本を吸い終えても満足した感じが薄く、次の1本へ手が伸びるまでの時間が短くなった。気がつけば、明らかに本数が増えていた。
「弱いタバコへ変えれば、少しはましになる」
そんな単純な計算では、自分の行動は動いてくれなかった。
1本の数字を下げても、1日は軽くならなかった
タバコの箱には、強さを比べやすい数字が書かれている。そのため、クール12mgよりクールマイルド8mgを選べば、吸い方も少し穏やかになるように感じる。
けれど、私が求めていたのは数字の小ささではなく、「吸った」と感じられる満足感だったらしい。1本で足りないと感じれば、足りない分を本数で埋めようとする。1本あたりの数字は下がっても、吸う回数が増えれば、1日全体が軽くなったとは素直に言えない。
これはタバコだけの話ではないのかもしれない。食事でも買い物でも、「一つひとつを小さくすれば全体も減る」と考えたのに、回数が増えて結果が変わらなかった経験はある。人の行動は、商品に書かれた数字だけで決まるわけではない。足りなさを感じたとき、それを埋め合わせようとする動きまで含めて見なければ、本当の変化は分からない。
安いタバコが、本当に節約になるとは限らない
次に気になったのは価格だった。
次の候補として考えたのは、非メンソールのラッキーストライク11mgだった。以前にも吸ったことがあり、1本の満足感を基準にしやすい。ただ、一箱620円で、クールより40円高い。毎日吸うことを考えると、この差は無視しにくい。
一方、ラッキーストライク・エキスパートカット10mgなら、一箱450円ほどで買える。通常のラッキーストライク11mgと比べると170円安い。箱だけを並べれば、こちらのほうが明らかに節約になるように見える。
ただ、以前に吸ったとき、エキスパートカットは通常のラッキーストライクより軽く、吸った感覚が乏しいと感じた。その軽さを本数で補い、購入する間隔が短くなれば、170円の価格差がそのまま節約額になるとは限らない。比べるべきなのは一箱の値段ではなく、一日に何本吸い、何日で一箱を空け、ひと月にいくら使ったかだ。
「安いものを選んだ」という安心感と、「実際に支出が減った」という事実は別である。数字を一つだけ見ると判断は簡単になるが、簡単になったぶん、見えなくなるものもある。
味の好みではなく、身体の反応も変わっていた
もう一つ変化があった。以前は好んでいたクールのメンソールを、最近は不快に感じるようになった。喉へ直接当たる冷たさが、気持ちよさよりも強い刺激として残る。
だから、次は非メンソールのラッキーストライク11mgを考えている。けれど、これは単なる銘柄の好みだけではない気がしている。同じものを吸い続けていても、身体の受け取り方はいつも同じとは限らない。以前は気にならなかった刺激が、ある日からはっきり不快になることもある。
その感覚を「気のせい」として押し戻さず、いまの自分から届いている情報として受け取ることは大切だと思う。数字や価格だけでは分からないが、実際に吸っている身体は、合わなくなっていることを先に知らせているのかもしれない。
銘柄選びの奥に、依存の仕組みが見えた
ここまで考えると、問題はどの銘柄が一番お得か、どの強さならちょうどよいかだけではなくなってくる。
強いものを選べば1本あたりの重さが気になる。弱いものを選べば満足できず、本数が増える。安さを優先すれば、軽さを補うために吸う回数が増える可能性がある。満足感を優先すれば、一箱あたりの価格が上がる。
どの選択肢にも都合のよい面と、見落としやすい面がある。銘柄を変えるだけで問題全体が解決するわけではない。むしろ今回の変化によって、「私は何mgを吸っているか」よりも、「足りないと感じたときに、どんな行動を取るか」のほうが重要だと見えてきた。
これは、自分を責めるための材料ではない。意志が弱いから本数が増えた、と片づけてしまえば、そこで考えることが終わってしまう。そうではなく、満足感が下がると回数で補おうとする。その仕組みが実際の行動として確認できた、と考えるほうが次の判断に使える。
「軽い・安い」ではなく、実際に起きたことを見る
今は、通常のラッキーストライク11mgを満足感の基準にしながら、ラッキーストライク・エキスパートカット10mgも一箱だけ比較してみようと考えている。ただし、見るのは箱に書かれた数字だけではない。
1本でどの程度満足するのか。次に吸うまでの間隔はどうなるのか。喉の不快感はあるか。一日の本数と、実際の支出はいくらになるのか。そうした結果をまとめて見なければ、自分にとって何が起きているのかは分からない。
タバコを軽くしたことで、本数が増えた。それは望んだ結果ではなかったが、自分の行動を理解するための材料にはなった。
「軽そうだから」「安そうだから」という印象ではなく、選んだあとに実際の生活がどう変わったかを見る。タバコに限らず、自分の選択を考えるときに必要なのは、きれいな理屈よりも、その後に起きた事実なのだと思う。