海外向け旅行サービスを共同で運営して、2年以上になる。サイトを作り、検索から人に見つけてもらうための記事を増やし、問い合わせが来るたびに導線を直してきた。
その積み重ねの先で、ようやく十数名分、総額100万円を大きく超えるツアーが売れた。うれしかった。これで「Webから高額商品を売る」という仕事が、少しは伝わるかもしれないとも思った。
ところが、最初の販売マージンを受け取る段階になって、事前に合意していた条件を変えたいと言われた。喜びより先に出てきたのは、「なぜ今なんだ」という怒りだった。
数%なら譲ってもいいと思っていた

私の認識では、取り分は売上の20%として事前に合意していた。今回言われたのは、そこから決済手数料にあたる数%を引きたい、という話だった。
金額だけを見れば、事業全体を投げ出すほどではない。最初は「最悪、今回は譲ってもいいか」とも考えた。続けていけば積み重なる額ではあるけれど、関係を壊すよりはましなのではないか、と。
ただ、話を聞くほど引っかかりが大きくなった。理由が税金の話から、私の取り分が多くて不公平だという話へ変わっていったからだ。しかも、条件を相談されたのはサービスを売る前ではなく、実際に支払う段階だった。
問題は数%ではなかった。「いったん約束した数字は、成果が出たあとでも守られるのか」という信頼の問題になっていた。
「成果が出れば伝わる」と思っていた

以前にも、相手から「十分に仕事をしていない」と受け取れる言葉を向けられ、強く腹を立てたことがある。そのときの気持ちは、以前の記事に残している。
あの時点では、まだ大きな成果が出ていなかった。だから心のどこかで、結果さえ出れば、サイト運営やSEOの価値も分かってもらえると思っていたのだと思う。
今回は、実際に成果が出た。十数名分のツアーがWeb経由で売れた。それなのに、今度は「取り分が多い」と言われた。
「成果が出たじゃないか。成果が出た上で、今度はマージンの支払いを渋るのか。いい加減にしてくれ」
かなり乱暴な言葉だけれど、その瞬間の気持ちはこれに近かった。そして同時に、「成果を見せれば理解してもらえる」という自分の仮説が、通用しない相手もいるのだと気づいた。
Webの仕事は、売れるまでが見えにくい

以前は、問い合わせは来るのに成約しない時期が続いていた。その頃は、「あと一歩で止まっている」と考え、記事からの導線や、旅行を検討する人の不安をどう減らすかを見直していた。
それからも、ほぼ毎日の記事更新とサイトのメンテナンスを続けた。AIを使っても記事制作には費用がかかる。WordPressのテーマ代も、保守の時間も、画面には表示されない。注文が入らない期間にも、少しずつ支出と作業は積み上がっていた。
もちろん、現地でツアーを動かす仕事も大変だと思う。私はその負担を軽く見たいわけではない。ただ、Web経由で百万円単位の商品を売るまでにも、別の種類の難しさがある。その二つを比べて、どちらが偉いかを決めたいわけでもない。
お互いの仕事が見えにくいからこそ、最初に決めた役割と報酬が必要なのだと思う。
今回の精算と、これからの条件は分けたい

怒っていると、これまで使った費用や作業時間を全部並べて、「これだけやった」と証明したくなる。私にもその気持ちはある。ほぼ1年続けた記事制作の費用だけでも、無視できる額ではない。
けれど、それを今回の精算の根拠にすると、契約の話が「どちらがより頑張ったか」という感情の値切りに戻ってしまう。
今のところ、今回の取引は合意していた条件で精算してもらいたいと思っている。決済手数料を今後どう負担するか、20%という比率を見直すかは、その後に別の話として協議すればいい。変更するなら、次の案件から。対象と計算方法を先に決め、双方が納得してから始める。
これは法律上の結論ではない。契約書の解釈は、必要なら専門家に確認すべきことだ。ただ、自分の中では、「今回の約束」と「次回からの相談」を混ぜないことが、信頼を保つ最低限の線に思える。
続けたいからこそ、曖昧に譲りたくない

この事業を今すぐ捨てたいわけではない。2年以上かけて育て、ようやく成果が出始めた。ここで終わらせるのは惜しいし、できるなら協業は続けたい。
一方で、個人の仕事は収益だけでなく、人間関係の負荷まで含めて考えなければ続かない。以前、仕事を選ぶ基準を整理したときにも、そのことを書いた。
「続けたい」と「今回は譲れない」は、矛盾しないのだと思う。むしろ、今回だけ飲み込んで表面上の関係を守れば、次の売上が立つたびに同じ不安が戻ってくる。
まだ答えは出ていない。今回の精算がどう終わるのか、その後に落ち着いて条件を話し合えるのかも分からない。
ただ、怒りが出たことまで悪者にしなくていいとは思っている。怒りは相手を壊すためだけの感情ではない。「そこから先は、約束を守ってほしい」と知らせる境界線にもなる。
今回は、その怒りをぶつけるのではなく、合意した数字の前に静かに置いておきたい。協業を続けるために必要なのは、先に折れることではなく、約束を守った上で次の条件を話せる関係なのだと思う。


