長く運営してきたWebサイトを、WordPressの新しい環境へ移行している。
単にデザインを変更するだけではない。古いサイトには数百件の記事と大量の画像があり、過去の仕組みや不要な記述を整理しながら、必要な資産だけを安全に引き継ぐ必要がある。
一つずつ手作業で処理するのは現実的ではないため、現在はAI搭載エディターのCursorを使い、記事データの変換や検証を進めている。
AIを使えば、これまで何日もかかっていた作業を短縮できる。
そう期待していたのだが、この日は一つの処理が8時間以上経っても終わらなかった。
朝に出した指示が、夕方になっても終わらない
朝のうちにCursorへ指示を出した。
処理が終わるまでの間に、別の作業を進めればよい。そう考えていた。
しかし、数時間経っても処理は終わらない。さらに時間が必要だという。最終的には、指示を出してから8時間以上が経過していた。
Cursorが処理している間、私が画面の前で待ち続ける必要はない。それは分かっている。
それでも、完全には意識を切り替えられなかった。
処理が止まっていないか。途中で確認を求められていないか。エラーが出ていないか。あとどのくらいかかるのか。
ときどき画面を確認してしまい、そのたびに別の作業への集中が途切れた。
AIに作業を任せたはずなのに、頭の中では作業を持ち続けていた。
待ち時間は、自由時間とは限らない
私は、Cursorの処理中にコラムを書いたり、細かな事務作業を片づけたりしようと考えていた。
ところが、思ったほど進まなかった。
疲労も溜まっていたため、横になるとそのまま眠ってしまう。机へ戻っても、何から再開するかを考えるだけで時間がかかった。
細かなタスクは、一見すると軽そうに見える。
しかし実際には、作業内容を思い出し、必要な画面を開き、現在地を確認し、完了条件を判断する必要がある。種類の違うタスクを行き来するほど、その切り替えにも力を使う。
さらに、Cursorの処理が終わっていないという意識が残っている。
そのため、待ち時間は必ずしも自由に使える時間ではなかった。
AIが作業している時間と、人間が別の作業へ集中できる時間は、同じではないのだと思う。
サーフィンへ行けばよかったという後悔
その日の朝は、海へ行く選択肢もあった。
ただ、Cursorの処理がそれほど長くかかるとは思っていなかった。朝のうちに終われば、すぐ結果を確認して次の工程へ進めると考え、作業を優先した。
夕方になっても処理が続いている画面を見ながら、これならサーフィンへ行けばよかったと思った。
海へ行って帰ってきても、まだ処理は終わっていなかっただろう。
もちろん、処理時間を事前に正確に予測することは難しい。朝の判断が間違っていたというより、判断するための実測値を持っていなかった。
今回初めて、全件を対象にした処理には8時間以上かかる可能性があると分かった。
後悔だけで終わらせず、この事実を次の運用へ反映させる必要がある。
大量処理は「夜間バッチ」にする
今後、記事の全件変換や本番環境への全件投稿を行う際には、寝る前にCursorへ指示を出すことにした。
日中は、少数の記事を使って処理内容を確認する。
本文が正しく入っているか。画像が表示されるか。URLやカテゴリーが想定どおりか。重複投稿が発生しないか。
5件から10件程度で検証し、仕様が確定した後に全件処理を始める。
全件処理は就寝前に実行し、起床後に結果を確認する。
これなら、Cursorが8時間かかっても、その大半は睡眠時間と重なる。日中の作業や、サーフィンへ行ける時間を処理待ちに使わずに済む。
ただし、本番環境への大量投稿を寝ている間に行う以上、途中で止まっても再開できる設計が必要になる。
処理済みの記事IDを記録する。同じ処理を再実行しても二重投稿しないようにする。失敗した記事は例外一覧へ残す。成功件数、失敗件数、スキップ件数を最後に出力する。
そして、実行前には必ずバックアップを取る。
夜間処理へ変えるだけではなく、人が見ていない間でも安全に止まり、安全に再開できる構造まで作っておくことが重要だ。
AIを速くするより、待たなくてよい仕組みを作る
AIを使うと、何でも短時間で終わるように感じることがある。
しかし、大量のファイルやデータを扱えば、AIを使っても処理時間は必要になる。むしろ、人間が手作業では扱えない量を一度に任せられるからこそ、一回の処理が長くなることもある。
今回の問題は、Cursorが遅かったことだけではない。
長時間処理を、短時間で結果が返ってくる対話型の作業として扱っていたことにある。
設計や判断、少数件の確認は日中に行う。大量変換や全件投稿は夜間に行う。翌朝、人間が結果と例外を確認する。
役割を分ければ、AIの処理速度に自分の一日を合わせなくて済む。
この日は、処理を待ちながら、海へ行けばよかったと少し後悔した。
それでも、8時間という実測値が得られたことで、次回から同じ待ち方をしなくて済む。
AIを使った作業を効率化するとは、AIそのものを速くすることだけではない。
AIが動いている間、人間の時間を止めない仕組みを作ること。
それも、これからのWeb制作に必要な設計の一つなのだと思う。