古いオートバイにサーフボードを積み、海まで走っていく。
そんな景色を想像すると、それだけで少し気持ちが軽くなる。車で海へ行くのとは違う。風を受けながら海へ向かい、波を見て、入るかどうかを決める。その移動も含めてサーフィンになるような気がする。
そこで、所有しているカワサキ・エストレヤにサーフボードキャリアを付けられないか調べてみた。
最初は、ラックを買って取り付ければ済むと思っていた。けれど、実際にはそれほど単純ではなかった。
エストレヤにサーフボードキャリアを付ける費用
調べてみると、エストレヤにサーフボードを積めるようにする費用は、おおよそ3万円から12万円ほどかかる可能性がある。
既製品のリアキャリアとサーフボードラックをうまく組み合わせられれば、3万〜5万円ほどで収まるかもしれない。一方で、車体に合わせた専用ステーの製作や溶接が必要になれば、7万〜12万円程度まで上がる。
現実的な予算として見えてきたのは、6万〜8万円ほどだった。
決して小さな金額ではない。生活に余裕があるときなら、趣味の出費として割り切れるかもしれない。しかし、今の自分にとって6万〜8万円は、思いつきだけで使える金額ではない。
だからこそ、この改造が自分の生活に何をもたらすのかを考える必要がある。
問題はサーフボードの重さだけではなかった
サーフボードは、それほど重いものではない。ショートボードなら数キロ程度なので、最初は「重量さえ耐えられれば大丈夫なのでは」と思っていた。
しかし、走行中に問題になるのは重さだけではない。
横に積んだボードは風を大きく受ける。速度が上がれば、キャリアの取付部分には横方向の力がかかり続ける。段差を越えるたびに振動も加わる。
リアキャリアにラックを付けただけでは、テコの力が一か所に集中する可能性がある。安く取り付けられても、走行中に緩んだり、破損したりすれば、自分だけでなく周囲の人も危険にさらしてしまう。
欲しいのは、サーフボードを載せたエストレヤの見た目ではない。
安心して海まで走り、無事に帰ってこられる移動手段だ。
そう考えると、前後2点で支える構造や、車体フレームへの荷重分散、脱落防止ベルト、防錆処理などが必要になる。海の近くでは潮風による錆も避けられない。
安さより安全を優先すると、6万〜8万円という金額にも理由があることが分かってきた。
「欲しいか」ではなく「暮らしが変わるか」で考える
バイクを改造したいと思うと、つい部品や見た目のことばかり考えてしまう。
けれど、本当に考えたいのは、改造したあとに生活がどう変わるかだ。
サーフボードを積めるようになれば、少し波が気になる朝に、車を出すほどでもない距離を気軽に見に行ける。駐車場を探す必要も減る。海に入らない日でも、バイクで海岸まで行って、波を見て帰ってくることができる。
海へ行くまでの心理的な距離が短くなる。
これは単なるバイク用品の購入ではなく、自分が大切にしたい時間へアクセスしやすくするための投資とも言える。
ただし、「海に行きやすくなるはず」という期待だけで決めるのも危険だ。実際には、雨の日には使いにくい。長いボードは積載が難しい。強風の日は運転に不安が出る。法的な積載寸法も確認しなければならない。
憧れだけでなく、使えない条件まで含めて考えることで、ようやく生活道具として判断できる。
すぐに買わず、実車で確かめるところから始める
今の段階で出した結論は、「改造する」と決めることではなかった。
まずは、実際に使っているサーフボードの長さや幅を測る。エストレヤの横に置いて、どの位置ならタイヤやマフラーに干渉しないかを見る。そして、サーフボードキャリアの施工経験がある店に車体を持ち込み、既製品で対応できるのか、ワンオフ加工が必要なのかを確認する。
見積もりは、汎用品を使う場合と、専用ステーを作る場合の二通りを出してもらう。
ここまで分かれば、6万〜8万円が本当に妥当なのか、自分の暮らしに見合う投資なのかを判断できる。
調べる前は、「付けたいか、諦めるか」の二択だった。
しかし、構造や費用を知ったことで、「どの条件なら実行するか」という判断に変わった。
好きな暮らしは、現実を無視してつくるものではない
海の近くで、好きなバイクにサーフボードを積んで走る。
それは少し絵になるし、自分らしい暮らしのようにも感じる。
けれど、好きな暮らしは、勢いだけで手に入れるものではない。費用、安全性、使う頻度、維持の手間を一つずつ確かめ、そのうえで選ぶものなのだと思う。
現実を見ることは、夢を諦めることではない。
むしろ、憧れを一時的な気分で終わらせず、長く続けられる形に変える作業なのかもしれない。
エストレヤにサーフボードキャリアを付けるかどうかは、まだ決めていない。
ただ、海へ行きやすい暮らしをつくりたいという気持ちは、前よりはっきりした。
その気持ちを大切にしながら、次は実車とボードを並べ、現実の寸法から考えてみようと思う。